「敦さん、この前言ってた例の製品だけど――」
尚輝の質問に気を取られていると、後はやりますと言ってくれた彼女。
コーヒーをお願いして、俺はその場を離れた。
「例の案件は厳しいだろうな。あの物量なら間違いなく海外調達だろ」
「んーそこをどうにか避けたいけど、やっぱ国内じゃ限界ありますかね」
「価格叩かれて、叩き落とした単価で仕事取れたとしても、後で首が回らなくなるからな。向こうでの案件に切り替えた方が勝算ありだろうな」
「やっぱ無理かー」
煙草を灰皿の上で軽く指で叩き灰を落とし合いながらそんな会話をしていると――。
キッチンからコソコソと、彼女と晃が何か言い合いを始めていた。
特に気に留めることはなかったが、尚輝の気がそちらに逸れたので、なんとなく釣られ、俺もそっちを見ると。
「もう話し掛けて来ないで」
と、彼女が晃に向かって放ち、只ならぬ雰囲気を感じた。
「どうしたんだかな?」
「さあ・・・・・・?」
その状況は手強な兄貴にも解らないようで、困った表情を見せ2人から目を逸らし、割っては入らずに、引いた雰囲気を出した。


