「でもさ、朝から牛丼とか、男ってどうしてそういう発想になるかな・・・・・・」
「オイ、文句言うなら食うな」
彼女の言葉に、棘のある晃の言葉。
彼女の言う通りだと頷いていた俺だったが――。
さっきから晃と彼女の間には、あまりいいとは言えない空気が流れており、そこに少し引っ掛かった。
「ねぇ尚輝、お金、どっちが払ったの?」
「俺」
「尚輝が買ったの? じゃあ、晃に食うなって言われる筋合いないし」
「はいはい、もういいから座れよ、ってここ俺んちじゃねぇけど」
何故か睨み合っていた、晃と彼女。
彼女の余り気迫のない睨みは、ちょっと可愛いとさえ思えてしまった。
一生懸命晃と対峙している姿に尚輝は呆れ顔。
溜め息を吐いた尚輝がテーブルに牛丼を並べ、その姿を見て、晃もこちらにやって来た。
晃は食べている間、終始不機嫌で、彼女は紅生姜丼と言っても可笑しくない、紅に染まるお子様牛丼を無言で食べていた。
食べ終わってコーヒーでもなんて思っていると、
「私がやります」
気の利く彼女が席を立ち、キッチンにやって来た。


