尚輝の会社の人で――喩えそれが上司だとしても、知らないに等しい人を家に入れるのは、私の中では微妙だった。
別に尚輝はいいかも知れないけど、なんの相談もなしにっていうか、連絡すら私にないというのは納得がいかない。
尚輝の家ではあるけど、私の家でもあるんだ。
「ねぇ尚輝、お客様が来るなら来るって、先に言っておいてよね? そうと分かってたら、どこかで時間潰して帰ったのに」
お互いの共通の友達以外が、家に遊びに来ることは、大学時代から避けていた。
でも、それでもどうしようもない時は、部屋でカチ合わないようにする為に、どちらかは外出して――そうならないようにしていたのに。
やっぱり今日は、智子のところに買い物帰りに寄って行けば良かったかな。
駅で別れる時、智子の「今日、うち寄ってく?」って言葉を思い出して、その話に乗らなかったことに後悔していた。
「俺、美紗に電話したけど、出なかっただろ?」
「えぇっ!? 本当に?」
「迎えのコールが来た後だったけど、一応と思ってラインもしといたぞ」
そう言われて、急いでバッグの中からけいたいスマホを取り出した。


