さっきみたく、動揺して焦って終わりなはずだ。
俺はさっき聞こえて来た、晃の放った言葉が原因なんだろうと思っていたが、晃は何も言わなかった。
「あー、着替え、渡すんだったな」
尚輝はそう言いながら、手に持っていた袋と共に、リビングから姿を消した。
リビングから尚輝がいなくなると、シーンと静まり返り。
俺は、それを、なんとも嫌な空気に感じた。
「あっちゃんさ、」
「――ん?」
キッチンの中から、晃が冷蔵庫を開け、俺に声を掛けてきた。
温くなったコーヒーに口を付け返事を返すと。
「美紗と、昨日やっちゃったりした?」
突然なにを聞いて来るかと思えば、朝からなんとも下な話で。
不覚にも俺は咽そうになっていた――が、ギリギリの所で耐え凌いだ。
「お前な、高校生でもないんだから、そんな質問するなよ」
「――まあ、そうだけど」
「尚輝ならともかく、なんで晃が気にするんだ?」
「いや、それはなんつうか。あっちゃんて、美紗のこと女として見てんのかなーって、ちょっと気になってさ」
やっちゃった?
って、なんだよ。
しかも女として――って、なんなんだよ。


