その後ろを、歯を磨きながら入って来た晃は、キッチンで口を漱ぎ始め。
その晃を見ていると、その右頬は、なんとなく赤かった。
「あれ、敦さん眼鏡かけてる」
「ああ、これか」
「眼鏡も似合ういい男か――朝からなんかセクシーだね」
どこまでも無邪気か?
尚輝の言葉に、俺は、ふっと息をもらした。
「つーか、晃、お前、なんかほっぺた赤くねーか?」
尚輝も気付いたそれに、晃は口を漱ぎ終えた後、「マジ痛ぇ」と、手を水に濡らし。
それを頬に当て、冷やしている感じだった。
「美紗の張り手食らった」
「は? なんで?」
「美紗がシャワー浴びてるなんて知らなかったんだよ」
「なに、お前、それで風呂場に入ったのか?」
「ちげーし! 風呂に入ってたら流石に分かるだろ? 俺は歯を磨こうと思ってだな」
「もしかして、脱衣所開けたらシャワー上がりの美紗とバッタリみたいな?」
「まぁ、そんなとこだ――事故だな事故」
「でもそれで美紗が張り手?」
「痛烈な、な」
「そこまでするか?」
尚輝の疑問は鋭いもんだった。
裸を見られた所で、恐らく彼女はビンタなんてしないだろう。


