「ちょっと!! いきなり立ってないでよ!!」
彼女の叫んだ声が、脱衣所から聞こえて来た。
晃の奴、脱衣所に入ったのか?
さっきの出来事があったばかりの彼女に対し、配慮が欠けていたと、自分の男としての器量のなさに、苦笑いだった――が。
「ばーか、こっちはお前の裸なんて見慣れてんだよ。お前も俺に見られ慣れてんだろ? 今更恥ずかしがってんじゃねぇ」
晃のそんな言葉が、壁を隔てているにも関わらずダイレクトに俺の耳に突き刺さってきた。
――は?
一体、それはどういうことだ?
ただの同級生が、お互いの体を見慣れ――見られ慣れた関係ってのは。
彼女と晃は、昔付き合っていたってことか?
それとも、現在進行形か?
俺がそう考えていた時、再び部屋の鐘が鳴った。
我に返り、それに反応して出ようと思ったが。
リビングの半開きになっていたドアを軽く押すと、晃が歯を磨きながら、玄関のドアに向かっている姿が目に映った。
お邪魔しまーす、なんて尚輝の声が聞こえて来たが。
俺は聞いてはいけないことを聞いてしまった気がして、尚輝と目を合わせられず、おはようとだけ返した。


