こちらは見てしまった側であって、彼女の羞恥は相当だろうと思い。
結局の所、俺は気の利いた言葉のひとつも言えず――彼女がドアを開閉させる音を、不本意ではあったが、聞くに留まっただけだった。
「あの、本当にすみません。完全に寝ぼけていて、ここが家だと勘違いしてしまって――」
俺が部屋をノックして入ると、申し訳なさそうにベッドにちょこんと座っていた彼女は、心の底から申し訳なさそうに謝罪した。
「あのさ、俺、視力が悪くて、基本コンタクトなんだ。だから見てないというより、見えてないから、」
「えっ――見えてなかったですか?」
「髪の雰囲気で、女性だって分かったくらいで」
それは、完全なる虚偽ではあるが――。
それが今の彼女にとっては良いだろうと考えた。
その虚偽に対し、顔をほんのり染めた彼女は、少しホッとしたような表情を見せた。
「シャワー入っておいでよ」
「いい、んですか? お借りしても」
「お風呂、入りたかったんでしょう?」
そう聞けば、素直に頷いた。
タオルは用意してあるからとだけ言い残し、俺は部屋を出て、安心感を植え付けられたことにホッとしていた。


