未だに彼女に彼氏がおらず、背へのコンプレックスは捨てられない――というか、乗り越えられていない。
彼女のそんな部分に触れてしまった今、どうにかしてやりたいとは思った。
女性として魅力的である彼女であれば、そんな変な同情心みたいなものが無くとも、付き合ってみたいとは思うが。
唯、どうなんだろうか――と、どこか攻めきれないでもいた。
まだ完全に煮え滾ってない、とでも言ったらいいのか?
彼女にとって、背の問題というのはデリケートな問題で、付き合うには結構気も遣うだろう。
良好な関係の維持も、少し難しいと感じることもあるかも知れない。
唯、彼女の悩みを取り払えるのならば取り払ってやりたいし。
気張らなくていいと、その強固とも言えるコンプレックスを、俺で楽にしてやれるなら、楽にしてやりたい。
『妹は、女としての幸せ――みたいなのを、未だに知らないんですよね』
尚輝が前に言っていた言葉を思い出す。
目を瞑り眠ろうと試みたが、あまり寝付きがいいとは言えず。
翌朝、俺は寝不足を振り払うかのように、静まり返ったマンションの一室の風呂に向かった。


