彼は、理想の tall man~first season~


未だに彼女に彼氏がおらず、背へのコンプレックスは捨てられない――というか、乗り越えられていない。

彼女のそんな部分に触れてしまった今、どうにかしてやりたいとは思った。


女性として魅力的である彼女であれば、そんな変な同情心みたいなものが無くとも、付き合ってみたいとは思うが。

唯、どうなんだろうか――と、どこか攻めきれないでもいた。

まだ完全に煮え滾ってない、とでも言ったらいいのか?


彼女にとって、背の問題というのはデリケートな問題で、付き合うには結構気も遣うだろう。

良好な関係の維持も、少し難しいと感じることもあるかも知れない。

唯、彼女の悩みを取り払えるのならば取り払ってやりたいし。

気張らなくていいと、その強固とも言えるコンプレックスを、俺で楽にしてやれるなら、楽にしてやりたい。


『妹は、女としての幸せ――みたいなのを、未だに知らないんですよね』

尚輝が前に言っていた言葉を思い出す。


目を瞑り眠ろうと試みたが、あまり寝付きがいいとは言えず。

翌朝、俺は寝不足を振り払うかのように、静まり返ったマンションの一室の風呂に向かった。