『いや、明日休みだし、大丈夫っすよ』
「そうか」
ねえ、敦さん――そう言われ、何かと思って返事を返すと。
『もしかして、美紗が寝ちゃったって電話?』
どこまでお前には彼女の状況が見えているのか――尚輝はそう聞いて来た。
「ハハッ、良く解ったな」
『いや、なんも疾しいことがなければ、敦さんなら電話してくるかなーって。とっくに雨止んでんのに美紗帰って来ないから、どうにかなってるのかなって思ったけど』
「どうにかって、お前――」
『いやいやいやいや、男と女だから、なにかあってもおかしくないでしょ? ってことで、電話がなければ俺に後ろめたい展開で、電話があれば美紗が寝たかなんかだろうなって、俺の予想はそんな感じだったから』
怖い兄貴だと――、手強い奴だと――、そう思いもしたが。
後ろめたいこと――つまりは、俺が彼女と。
そんなことをしてしまったら、流石に素知らぬ顔して尚輝に電話は出来ないだろうと、俺は妙に納得させられていた。
『美紗は、平日起きるのが早いから、酒入ると寝るかもなって思ってたんだけど、マジで寝たのか』
「俺を尚輝だと思ってる」


