歯ブラシを持っているかと聞けば、いつもお昼休みに磨くから持ってる――と、なんともOLらしい返答。
あらゆることに対応可能な物を持ち歩いてる彼女のバッグは、だからあんなにも重かったのかと、俺は再び納得だった。
俺を完全に尚輝だと思っている彼女は、彼女の家では尚輝の部屋であろうドアの前で、俺に向かって「なおき、おやすみ~」などと、ふら付きながら言い。
俺は、おやすみと返して、晃の部屋に入らざるを得なかった。
それから、俺の部屋のドアが閉まる音も聞こえ、晃の部屋で少し時間を潰し。
完全に寝たであろう頃合いを見計らって、俺は一旦自室へと戻った。
規則正しい寝息を立てている彼女を起こさないよう、手にしたハンガーに彼女の服を掛け。
そしてグラスとボトルを片付けた。
携帯と煙草と灰皿を持ち、その部屋をそっと閉め。
寝る前に尚輝に電話を掛けた。
勿論、夜中に電話なんてのは、非常識だと解ってはいるが。
寝てても出ろよ――と、そんな念を込めて、俺は発信ボタンを押した。
『――はい』
「悪い、寝てたか?」
『いや、まだ晃と家で飲んでます』
「遅い時間に、悪いな」


