「いぇ、その・・・・・・あれは、挨拶をされたから反射的にしていたというか――でも、最初は知り合いかも知れないって、ちょっと思ったりもしたりで」
なにを言っているんだろう――私は。
なんて、言いながら思ってて、声が徐々に小さくなった。
なんだか調子が狂う。
パフェ男の妙な爽やかさに、やられつつある――と。
何故だかそんな風に感じていた。
「昔からこんなだから、美紗は親から、一人暮らしの許可が下りないんすよねぇ」
尚輝の呆れたようなバカにしたような声が聞こえて来て、私は再びムッとして、ミラー越しに睨んでやった。
同い年なのに、子ども扱いって、気分悪い。
確かに尚輝と一緒だったらって条件で、家を出ることは親から許してもらったけど。
この歳になってまで、尚輝に子ども扱いされるのは、まっぴらごめんな気分だ。
膨れっ面で後部座席にイライラしながら座っていた私。
そんな私に、「こんな体勢で、申し訳ないけど」と。
パフェ男は助手席から振り返り、手を伸ばして、名刺を一枚私の方へ差し出して来た。
「あの、えっと・・・・・・」
まだ新しい名刺じゃないから、前部署のなんだけどね――と。
戸惑う私はパフェ男にそう言われながら、それを受け取ってしまった。


