彼は、理想の tall man~first season~


行き先を告げてくれた中條氏の隣に座り、ふと思った。

背が高い分、座高も違って、やっぱり頼りになりそうな体格だな――と。


私と中條氏と運転手さんの3人だけの車内には、気を緩めてしまったら、中條氏に寄り掛かって寝てしまいそな。

ゆったりと穏やかな、そんな時間が流れていた。


「本当に、厄介なお願いしてごめんね」


中條氏は、ふとした瞬間に謝って来た。


「いえ――旅行みたいなのは、久々なので楽しみです」

「そう? 海処だから――旨い物、食べられたらいいけど」

「そうですね。海鮮大好きなんで、穴場探して寄って行こうかなって思ってます」


海鮮丼とか、地元でしか食べられないシリーズとかを頭で思い浮かべていたら、なんだか食いしん坊将軍が騒ぎ出す。

あれだけ今まで飲み食いしていたのに、お腹が減った――みたいな、変な錯覚を起こした。


海水浴シーズンだと、道は混んでるのかな?

渋滞してたら、夏だし余計に疲れちゃいそうだけど。

普段そこまで長距離運転なんてしないから、新幹線の方がいいのかな――。

そんなことをぶつぶつと呟いていると、「あのさ」と、中條氏が口を開いた。