彼は、理想の tall man~first season~


なんとなく吸い出せなかった私に、松本さんは私が吸わない人だと思って我慢していたと言って、火を点け。

そのライターを中條氏に渡し、中條氏が火を点けた後、私の手元にライターが戻って来た。


「遠慮しないでいいから、好きなだけ吸ったら?」

「あ、はい」


このタイミングは逃すまいと、私は吸いたかった煙草に火を点けた。


「松本、さっきの話だけど、場所はどこでやんの?」

「んー、静岡」

「はぁ!? 都内じゃねぇの?」

「だから泊まりの予定よ」

「んだよそれ、聞いてねぇ」

「今、初めて言ったからな」


クスクス笑う松本さんとは対照的に、中條氏は物凄く申し訳なさそうに私を見て来た。

平気?みたいなその視線に、思わず「だ、大丈夫ですよ」と、言ってしまった。


土日と祝日は、基本的に私の勤め先の会社は休みだ。

だから、宿さえ確保出来ていれば何も問題はないだろうし、静岡なら車でも行ける。

――とか思っていた私は、ただ阿呆なだけだった。


「披露宴まがいの2次会やるホテル、長山の実家ホテルみたいだからな」

「お前、完全にはめたろ」

「んーどうでしょう?」