彼は、理想の tall man~first season~


「大丈夫ですけど――でも、私なんかでいいんでしょうか?」

「美紗ちゃんが一緒に行ってくれたら、俺としては助かる。きっと鼻高々だね」

「えっ?」

「知らない奴ばっかりの中に連れて行くのは正直気が引けるけど、一緒に行って貰えると、本当に助かる」

「――それじゃ、しっかり頑張ります」


しっかり頑張るって、なにを!?

なんて、自分に突っ込みを入れたくなったけれど。

中條氏が真面目な顔して言って来るもんだから、正直返事に困ってテンパったんだ。

ただ、私は――突然の松本さんのお願いだったから、動揺して全く気付いていなかった。

引き受けたお願いは、中條氏の彼女のフリをするという。

それが前提にあったということを。


それから松本さんが戻って来る間に、中條氏はウィスキーのボトルを頼んでくれて。

お手洗いから戻って来た松本さんの手には、真新しい煙草がふた箱握られ。

中條氏にそれをひとつ渡しながら、火がないと騒ぎ出し、私はバッグの中からライターを取り出した。


「美紗ちゃんも吸うの?」

「――はい」


松本さんは少し驚いた顔して、ライターを受け取った。