「中條さぁ、今、彼女とかいないんだろ?」
「いないけど?」
「親しくしてる、おなごはいるのか?」
「――特には、な」
「だとするとな? 俺が知ってる限りじゃ、美紗ちゃんしかいないのよ。ってことは、俺から頼める相手は、必然的に美紗ちゃんになるだろ」
「お前な、だからって、迷惑だろ」
「それは俺も承知のウエハースだけど、後々の事を考えたら、頼める人に頼むしかない、そうだろ?」
「・・・・・・」
「ってことで、美紗ちゃん、この通り――どうにか頼めないかな」
「ちょ、ちょっと松本さん、やめて下さい!! 私、そんな、」
深く頭を下げられてしまって、どうしていいのやら。
でも、松本さんはなかなか頭を上げてはくれなかった。
中條氏も1人で行くから変なことを頼むな――とか、色々言ってくれたけど。
松本さんは「この通り」と、言い続け――地蔵のようにピクリとも動かず。
「あの、松本さん――それって本当に、私なんかでいいんでしょうか?」
松本さんの土下座一歩手前の姿勢にお手上げ状態で困り果てた私は、頷かないと終わらないようにも思えた状況に、恐る恐るそう口にしていた。


