手に取って見ようかと悩んだけれど、本来の目的を思い出しカタログも手に取らず我慢した。
「他に買う物はないですか? 掃除機とか、テレビとか洗濯機とか」
「あー、洗濯機はどうしようか悩んでるんだよね」
「え?」
「いや、実際問題、クリーニングとコインランドリーでいいかなとか思うし」
「えぇっ? 家で洗濯しないんですか? 靴下もパンツもコインランドリー?」
「アハハッ、やっぱりそうだよね。家に1台はあった方がいいもんだよね」
「あの、すみません。うっかり馴れ馴れしい口きいてしまいました」
「いや、それは全然構わないんだけど。俺、家事全般本当にちんちくりんだからさ」
ちんちくりんて。
笑っちゃいけないんだろうけどちょっと笑ってしまった。
「あの、前はどうされてたんですか?」
「殆どクリーニングで、休みの日にコインランドリー行くか。あとは、恥ずかしい話だけど、母親が昼間来てやっといてくれてたり、とか」
基本的に何も出来ないと思われてて、俺も親に甘えちゃってたから――と。
やっぱり完璧な人間なんていないもんだと思いながら、正直な中條氏に逆に好感度が上がる。


