彼は、理想の tall man~first season~


車を値引きしてもらった分、中條氏になにか返せるとしたら、私にはこういうことしか出来ない――とか。

私の心境はそんな感じだった。


「炊飯器って10万以上するのもあるの? 気にして見たことがなかったから驚きだな」

「うわー、本当だー。テレビでは結構話題になってたけど。壊れない限り、あまり買い替えないですもんね」

「そうだよね。炊ければいいって感じの物だし」


色々あるなー、なんて迷いながら、中條氏は程よい価格の炊飯器を選んだ。


「あ、ホームベーカリーだ」

「パンが自動で焼けちゃうってやつ?」

「はい。この間、会社のパートさんが買ったって聞いて。色々作って持って来てくれるんですけど、凄いんですよ。フランスパンまで焼ける物もあるみたいで、パスタとかうどんとかピザ生地なんかもボタンひとつで」

「そうなの? 凄いんだね」

「このタイプは、冷ごはんに必要な粉とか入れて、パンの出来上がりですよ」

「へ~ぇ、冷ご飯から」

「はい」

無駄にテンションが上がってい私は、買おうか悩んだ。

ただ、実際に購入した所で、作れる余裕が、今の生活にあるのかどうなのかって考えると――微妙。