彼は、理想の tall man~first season~


戸惑いの私と楽しそうな尚輝。

そこにはかなりの温度差があった。


「敦さん本格的に仕事開始になったら、そんなに時間取ってもらえねぇから」

「――そうなの?」

「俺も最近ちょい遅いだろ? 敦さんは役付きになるから忙しなくなる。多分だけどな」

「そうなんだ」

「だから、距離は縮められる時に縮めておいたら?」

「―――」

「まぁ、美紗が敦さんに興味がないって言うなら、無理にとは言わねぇけど、」

「え? 私、そんな風には思ってないけど」

「そうなん? だったら、いいんじゃねぇの?」

「まぁ、そうだけど」


なにが、まぁそうなのか。

自分で自分の言っていることがおかしいと思いつつ。

この後の事を考えると、再び心臓がドキドキとし始めていた。

だけど、仲を深めるとか、距離を縮めるだとか。

一体どうしたらそうなれるものなのか。

それで少し悩まされた。


煙草を吸いながら、その後尚輝とはくだらない話をして。

中條氏が契約を終えた後、私も契約を交わした。


相当な値引きをしてもらえて、松本さんにも中條氏にも大助かりだった私。

「あの、本当にありがとうございました」