彼は、理想の tall man~first season~


想定していた諸経費込みの価格と見積書の価格の差異を計算。

確かに松本さんの言う通り、中條氏のしていることは抜かりないと、私にもそう思わせる。


それから、松本さんは支店長許可というものを貰いに、席を立った。

一担当ではGOは出せないという値引額。

本当に大丈夫かなと、ドキドキしながらコーヒーを飲んでいると、尚輝が「終わった?」なんて言いながら、呑気に戻って来た。

その片手には、尚輝が乗っている車の現行のカタログ。

此奴は買う気か?と思って尚輝を見ると、「買わないけど、気になるもんなんだよ」と、それだけ言って座った。


ふーん、そういうもんなの?

ちょっと良く解らない感情に支配されつつ。

さっきの妙な駆け引きが失敗に終わってしまったら、いくら位で落ち着くものなんだろうと不安になったけど。

松本さんが持って来た新しい見積書は、即決してくれるなら、という前提ではあったけれど。

――――え?

目を疑ってしまう金額だった。

「中條、これが俺の限界」

どうやら、こちらに有利に動いてくれたのは、中條氏がキッカケではあったけれど。

支店長に相談という体で動いていた、松本さんだったようだ。