尚輝は自由人で、展示車を見にふらっと行ってしまった。
「んー?」
松本さんは、眉間に皺を寄せながら、上から順に各項目を目で追い。
「なかなか頑張った感じだね」
その用紙をテーブルにパサリと置いた。
「で、松ちゃんはどこまで頑張ってくれんの? あっさり負け認めんの?」
「はっきり言って、厳しいな、コレ」
松本さんは見積書を見ながら、特殊な電卓と格闘。
そして、少し難しい表情を見せた。
と、思った瞬間――
「だけどこっちにもプライドあるから、負けれないわな」
中條氏の目を見て、ハッキリとした口調で言った。
チラッと見たその見積書は、私が買おうとしている車種。
あと、こっちも頼むよと、中條氏はもう一枚の見積書を松本さんに見せていた。
「中條って、ほんとに抜かりないよな」
この前見積ってもらったものよりも、更にオプションを付け、価格を叩き――。
それでも松本さんがこの間出してくれた見積りよりも、安い見積りを中條氏は持って来たみたいだ。
それは実家近くのディーラーで交渉をして来た物らしく。
松本さんは、んーどうかなと、少し困った表情をして見せた。


