背の高い彼に腕を絡ませて、少しだけ頭を彼の方へ傾けて。
横浜の桜木町の海沿い辺りを、そんな風に歩きたいとか。
学生時代に憧れていた、シチュエーション。
この人の背なら叶えられそうなんだけど――とか思ったのは、きっとやっぱり中條氏の背格好が、私の理想だからだろうか。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
「こんにちは、今日はよろしくお願いします」
姿勢良く出入口に立って出迎えてくれた、松本さん。
挨拶を交わすとニコリと笑顔を向けられて、私も笑い返せはしたけど、だけどなんだか意味もなく緊張し始めてしまった。
貯金が200万円近く一気に減ってしまうなんてことは、今までに経験がないこと。
少なからずそれも不安。
一番奥の商談スペースに通されて、深呼吸をした。
「噂の双子のお兄さんだよね」
頷き返すと、松本さんと尚輝の軽い自己紹介が始まり。
それが終わると、それから少し談笑が始まった。
そして、車の話を切り出したのは――
「松っちゃん、こんな感じの見積り出されたけど」
どこで取った見積りなのか?
見積書を松本さんに突き付けた中條氏だった。


