彼は、理想の tall man~first season~

―side 尚輝―


『悪い、尚輝――美紗飲ませ過ぎた』

晃からそう電話が掛かって来た時、俺は少なからず動揺した。

『なぁ、住所ってT市でいいのか? 美紗に聞いたんだけど、俺新しい住所聞いてないから分かんねぇんだけど』

タクシーをつかまえ、これから美紗を送る所だと言った晃。


「T市のM町の、あー運転手に代われるか?」

タクシーの運転手に電話を代わってもらい、俺は場所を伝え。

晃にはそのタクシーに美紗を押し込めておけばいいから、そのまま帰れと告げた。

逆方向だし、なにより今は敦さんが家に来てる。

男と2人で飲みに出歩いていたなんて知れたら、先行き不安は拭えない。


「敦さん、ちょっと美紗が飲み過ぎたみたいでさ、あと30分位したら、下まで迎えに行くけど、いい?」

「ああ、別に構わないけど――って、俺もう帰った方がいいな」

「いや、うちは全く問題ないから、時間平気ならまだいて下さいよ」


どうにか敦さんを引き止め、俺達は再び酒を飲み始めた。


「なあ、美紗ちゃんが酔うのって、どれくらい飲めば酔うって事になるんだ?」

珍しく敦さんから美紗の質問。