彼は、理想の tall man~first season~


中條氏は、本当に飲むんだねぇなんて言って、嫌味なくらい爽やかに笑っていた。

その言葉に、完全に中條氏の中で私は女枠からは外れたんだろうな――とか、この期に及んでそんな思考回路。

でも、それでもういいやって、そう思った。


こんなぐちゃぐちゃな思考で、まともに今後の恋愛なんて、考えられる訳がないし。

まだ始まってもいないんだから悩む必要だってない話なんだ。


「尚輝」

「ん?」

「やっぱり今日はとことん飲むから、打ちっ放しは日曜日の早朝にしてくれない?」


私はどうにでもなれ状態で、ロックグラスの中身を一気に飲み干した。

小一時間振りに喉が熱く灼ける感覚。

もうこうなったら勢い任せに飲むしかないと思って、私は煙草に火を点けた。


「おー飲む気になったか?」

「なった」

「うまいだろ、それ?」

「――うん」


正直口当たりだとか風味だとかを、じっくり味わったりなんてしていられる状況でもなく。

酔いが完全に回っているから、美味しいだとかの味覚が分からない。

ただ、体に入っていくそれを嫌だとは思わなかったから、相性はいいんだろうと思った。