「結構飲んで来たの?」
「え? あ――はい」
微妙に頭が痛くなっていた。
でも、もう、どうにでもなれ状態で。
中條氏の問いに頷き、私はダイニングチェアに腰掛けた。
その場所は、ソファーに座る中條氏から、少しだけ距離のある場所。
今日は隣に座る勇気なんて、とてもじゃないけど――ない。
「待てど暮らせど帰って来ないから、開けちゃったぞ」
「え?」
「折角だから、飲んどけよ」
テーブルにコトンと氷の入ったグラスを置いた尚輝。
手に持っていたのは、尚輝が父からもらってきた年代物のウィスキーのボトル。
いつ飲もうかって、楽しみにしていたのに――。
「飲みたかったんだろ?」
「うん」
なんで開けちゃうのよ!
とは、中條氏がいるから言えなくて。
ウィスキーを注ぐ尚輝は、私が言い留まったことを悟った感じで、喉を鳴らして笑っていて。
私は私で、今の自分の酔い加減でそれを飲むことを残念に思っていた。
「どんだけ飲んで来たん?」
「ビール4~5杯? と、ウィスキーをボトルで2本」
お前それ2人であけたのかよ?と、尚輝は呆れ顔だった。


