彼は、理想の tall man~first season~

「尚輝は、なんて言ってたんですか?」

「んー、尚輝はもう少し小回りが利く車でもいいんじゃないかって言ってたけど」

「そう・・・・・・ですか」


尚輝は私が車を買うことに対して、意地になっていたことに、多分気付いてて、それをさっき中條氏に電話で伝えたんだろう。

敢えて小回りが利くって言ったのは、今買おうとしているこの車じゃなくてもいいだろうということで。

必要以上にお金を遣う必要はないだろうって、遠回しに伝えようとしたのかも知れない。


「燃費と諸経費、他トータルで考えて、この車とかはどう? デザインも機能も女の子向けのコンパクトカー。見た目以上に結構広いと思うよ。後ろのドアは――」


数冊重ねてあったカタログの中から、手渡されたのは、本当に女の子向けと思える感じの車で。

中條氏は、軽く車の説明をしながら、私にそのカタログを開いて見せて来た。


「あの、これって・・・」

「あそこに展示してある車だけど、ちょっと見てみる?」

「は、はい」


突然の車種変更は――私に動揺を与えるに充分だった。