「…どうした?」

「ううん。なんでもない」

「そうか?」


放課後、美術準備室へと向かった。

今日は半日で学校が終わるため、 ほとんどの生徒は下校してしまった。


「お前は、帰らないのか?」

「うん。まだ、先生と一緒にいる」

「はは。そうか」

机に向かって仕事をしている先生が、ぽんぽんっと頭を撫でてくれた。




「…」


好き…



「…ねぇ、先生」

「ん?」

「ギュッてして」

「…汗くさいぞ」

「いいよ」

「変なヤツ」


苦笑いしながらも、先生は抱き締めてくれた。


外は暑いのに、抱き締められている体温は心地良い。



「はい、おしまい」

「!」


ほんの数秒で、その心地良い体温が離れた。


「…え?」


そして再び、先生は机に向かって仕事をし始めた。


…これだけ?


「…永井も、早く帰りなさい。下校時間はとっくに過ぎてる」

「!」




何それ…