「万里さん、胃とか痛くありませんか?大丈夫ですか?」
「え、うん、平気だけど」
心配した啓太が棚から胃薬を持ち出すが、当の彼女はけろっとしている。
「見た目は悪いけど、思ったよりいけるよ」
流石無類の甘党と言うべきなのか(果たしてこのケーキが甘いのか否かは不明だが)、それとも強運体質には激物も効かないのか。
どちらにしても万里スゲェ。
「勇者だ、ここに勇者がいる……」
虎次郎とアルフレドは驚愕と羨望、畏怖の入り混じった眼差しを向け
「寿命にも何も変化がない……幸福体質、大したものね」
舞白は懐中時計を眺め苦笑い。
「マ……ジで?じゃあ私も一口食べてみよっかな」
姉への対抗心からか、徐に包丁を手にし自らの分のケーキを切り分ける千歳。
断面からはおぞましい色の汁が染み出て来る。
グラスにカルピスを注ぎながら
「いや、止めといた方が良いって!お前の姉ちゃんは特殊なんだって!」
虎次郎が不安そうに窘めるものの、彼女は引かない。
「こんなもの……昔ファ○リーズと墨汁と塩酸を同時誤飲した時に比べたら、どうって事ない…!」
よく生きてるなお前。
勢い良くフォークを突き刺すと、意を決し、大口開けて一気にケーキを放り込む。
直後
「きえええええええええぇぇぇえ!!不味い不味い不味い不味い不味いぃぃいいいいいっ!!」
女子とは思えない絶叫の後、目を見開いたまま千歳卒倒。
この女、軽薄この上ない。
無論、予想は出来ていたが。