「やっぱり……」
実は鞠子からのメールを見た辺りで、虎次郎の脳裏を数年前のバレンタインデーの記憶がよぎっていた。
その日、京極鞠子は同僚全員に手作りチョコレートを配ったのだが、それを食べてしまった全ての人が突然意識を失い病院に運ばれたのだ。
何故、正規品を溶かして固め直しただけのチョコレートにそれ程の殺傷能力があったのかは未だ謎であり、天神学園オカルト研究会の研究テーマにまでなった事があるらしい。
因みに、噂によれば京極女史、あの“角砂糖”開発者の一人でもあるのだとか。
そんなこんなで当時を知る教職員の間では“マリーの手料理食べるべからず”は格言と化している。
つまり、つまりだ、京極鞠子はとんでもなく料理が下手なのである。
“下手”という言葉ではとても表しきれないレベルで。
「ナニコレ!これのどこがケーキなの!どう見たって激物でしょ激物!」
「ビジュアルが食品じゃない……」
「マリー先生ってもっと家庭的な人なのかと思っていたのだけど……」
「これを僕達に食べろ、と」
テンション急降下な一同。
「ま……舞白先輩、ミルクティーと一緒にフルーツケーキなんてどう?」
「私、フルーツケーキよりモンブラン派なのよね。貴方こそ食べたら?」
「そういやバルツァー、このケーキ食わないとジェノサイドだって生徒会長が言ってたぞ」
「見え透いた嘘は止めて下さい。そう言う先生が召し上がっては如何ですか」
「ぼっ僕、母の実家でたくさんご馳走になってお腹いっぱいなので、よかったら皆さん五人で食べちゃって下さい」
やんわりと押し付け合いが始まる。
そんな中
「なんだ、結構美味しいじゃん、これ」
「嘘ぉぉおおおおおおおんっ!」
果敢にも蛍光色の激物を口に入れたのは、隠れビビり・万里だった。

