「……お前らホントに食うつもりか?俺は知らんぞ、俺は」
ついさっきまでの夢気分はどこへやら、虎次郎の顔は舞白と張れる程に真っ青だった。
「何言ってんのジロー先生、食べるに決まってんじゃん」
千歳が箱をオープン。
……悪夢はここから始まる。
その瞬間、中から勢い良く立ち昇る黒煙。
むせこむ千歳、言葉を失う面々。
「なぁお前ら」
虎次郎が急に穏やかな表情になって言う。
「ケーキって発光すんのか?」
「「「「「…………」」」」」
煙が収まり漸く見えてきたそのケーキは――毒々しい蛍光紫色をしていた。
気のせいでなければ、淡く光を放っている。
「ケーキって発泡すんのか?」
「「「「「……………………」」」」」
所々から次々出る細かい泡。
このケーキには蟹でも住んでいるのか。
フルーツケーキの筈なのにどこにも果物らしきものは見当たらず、表面を覆っている蛍光紫のクリーム――と言うよりは寧ろ“光るスライム”と呼ぶ方がしっくりくるだろう――はマグマの如くコポコポ言っている。
クリームの間から僅かに覗くスポンジらしき部分は、これまた身体に害しかなさそうな毒々しい蛍光グリーン。
スイーツ特有の甘い香りは皆無であり、アンモニアのような刺激臭を纏っている。
そもそも、傾き歪み過ぎてケーキとしての原形をこれっぽっちも保てていない。
某ネコミミメイドのタルトの足元にも及ばない代物である。
いや、比較する事自体相手に申し訳ない。

