狙撃少女と別れ、男子寮の部屋に戻った啓太は眉根を寄せた。
「あれ…?」
部屋の鍵が……開いている。
帰省前に掛け忘れたのか?
いやいや、そんな筈はない。
何度も何度も確認したのだから。
と、言う事はまさか――空き巣!?
途端に震えだす少年の小さな身体。
どうしよう、まだ中にいるかも知れない。
武道の心得のない自分が空き巣相手に勝てるとは到底思えない。
けれどそれでも。
「に、逃げちゃダメだ」
某襲われ体質のような台詞を吐いて、覚悟を決める。
音を立てないように恐る恐るドアを開けると
「ジロー、シチュー作って」
「シチューだぁ?お前、日本人なら正月は餅食え餅っ。つうか“先生”を付けろ」
「ジロー先生かバルツァー君、お雑煮よそって来てぇ。あ、別に舞白先輩でも良いけど」
「それくらい自分でやりなさい。食べる分は動いて消費したらどうなのかしら」
「貴方達、人様の部屋でくつろぎ過ぎですよ。特に早川先生と幸多姉妹!コタツで寝るんじゃありません」
「うるさいなぁ、そういうバルツァー君だってコタツ入ってるじゃん。嗚呼もうテレビくらいゆっくり観せてよぉ」
聞こえて来た、覚えのある声と名前。
もしかして、と啓太は急いで部屋に飛び込んだ。