暖かくて、心地よくて。
なのに目が覚めてしまった。

きっと、嫌な夢を見たせいだ。

「相当疲れてんな、こりゃ」

安堵の溜め息を吐いて、虎次郎はまたすぐに眠りに落ちようとする、のだけれど。



頭がガンガンする。

今日参加した社会科教諭による飲み会、先輩方に勧められるまま、呑めない酒を無理して呷り過ぎてしまったようだ。



背中にのしかかる謎の質量を感じてもう一度目を開ける。

途端、視界に映る景色に、違和感を覚え

物凄い勢いで飛び起きた。

頭痛と格闘しながらきょろきょろと周りを見渡して、漸く理解する。



確かここは……保険医の、部屋。



暖かいと思ったのは多分こたつのお蔭。

重いと思ったのは多分誰かさんが掛けてくれたのであろう布団のお蔭。



当の誰かさんはこたつの向かい側で静かに寝息を立てていた。

こうして見ると結構綺麗な顔をしているかも、と見惚れている自分に気付き、慌ててこたつの上にあった蜜柑の皮を剥く。

実にへたくそな誤魔化し方。

それを丸ごと頬張って、男は横になり瞼を下ろした。



「あ、りがとよ」








【Dawn・終】