久しぶりに雨が降ってきた。
とても小雨とは言えないような、強い雨が。
「あらあら」
職員室の窓から鉛色の空を見上げた初は、眉を曇らす。
「貸し出し用の傘、足りるかねぇ」
▽▽▽
中庭から校庭へ続く短い階段の中段辺りに、膝を抱いて座る青年が一人。
寒雨は容赦なく、この青年の乱れた制服を、少し傷んだ黒い髪を、幼さの残る顔を、濡らすけれども。
しかし彼は、それを意に介す様子もない。
そんな事より、殴られた顔面や蹴られた腹、背が痛かった。
頬は赤く腫れているし、口からは出血している。
だがこの男はつい先程、その何倍もの大怪我を“相手”に負わせてやったのだ。
相手というのはつまり、学園に蔓延る不良どもである。
いや、教師達にしてみれば青年も、その不良どもの一人なのかもしれないが。