「僕には、何も、ないから」

「そんな事ねぇって!お前は―――」

弾かれたように口を開くが、有りふれた台詞しか頭に浮かばない自分が情けない。

物憂げな少年の表情に一瞬、幼い自分の影を見て

「…………っ」

何も言えなくなった。

その場かぎりの慰めが一番相手を傷付ける事を、誰よりよく知っていたから。



そう、ちゃんと、わかっているのに。

けれどそれでも。



「お前は、アイツに相応しい」



その言葉だけは、真実だと信じて。



だがそれは一体、少年と自身、どちらへ向けたものだったのか。








【君は僕の、・終】