「そろそろ会議の時間ですので、これで失礼します。なんだか、ボクの言いたい事ばかりを押し付けてしまったようで申し訳ありませんでした」

「いえ、そんな」

慌てて言うと、アルフレドは気まずそうに目線を逸らしながらも、薄く薄く微笑んだ。



それきり一言も発さずに再び書類を抱え、寒さに眉を顰めつつ、彼は校舎へと消えて行った。



ベンチに残された啓太は、残りのパンを静かに口に入れる。

やたら甘ったるい上、薬のような味のするそのパンを時間を掛けて噛んだ。

自分を心配してくれているのであろう少年の放った言葉を、何度も何度も心の中で反芻しながら。






そういえば彼の去り際、啓太の耳には弱々しい声で

「君が羨ましい」

と聞こえた、気がした。








【あなたを好きだと言わせてよ・終】