“隣、よろしいですか”と尋ねたアルフレドは、啓太が小さく頷いたのを見て木製のベンチに腰掛ける。

「あまり他人の問題に口出ししたくはないのですが」

中指で眼鏡を押し上げながら、くすんだ金髪の彼は猫背気味に座る少年を見やる。

少年の小さな背が、今日は余計に頼りなく感じられた。

「いつまでもウジウジするのは君の悪いところですよ。相手が何かしてくれるのを待ってばかりではなく、自分から行動を起こさねば」

的を射たアルフレドの言葉に、啓太の顔はますます暗くなる。

「それは、わかってます。だけど」

縋るように

「その一歩を踏み出すのが、恐いんです、とっても」

携帯を握る手に力が籠もる。



そう、わかっているのだ。
ただ待っているだけでは、求めるもの全てがその手から零れ落ちてしまう事など。

けれど啓太は思う。

「アリスカさんにもっと嫌われてしまうんじゃないかって」

アリスカは自分にとって、一緒にいられる事自体奇跡のような相手。

下手に踏み込んで疎まれるくらいなら、いっそこのまま離れてしまった方が幸せなのではないか、と。