“生きる”とは何か。
わかる筈もない。
私は、余りにも“死”というものに触れ過ぎた。
いや、もしかすると未だ、死にすら触れられていないのかもしれない。
辺りを染める杏色。天の果てから迫るのは、鉄紺を孕んだ藍色。
僅かな幸福をも惨劇で塗り潰すように。
ただ蒼く、蒼く。
確かなのは、自分が何かに喜懼している事だった。
けれどそれが何処から来る喜びなのか、また恐れなのか
そもそも“喜懼”なんて言葉で片付けて良いものなのか、これもやはりわからなくて。
右手に落とした鎌の刃が、杏色を反射して鈍く光るのを、不明瞭なままの目線で眺めてみた。
数多の拭えぬ命の叫びがこびり付くこの刃で私は、一体何人、何万人の人生に終焉を告げた事だろう。
嗚呼。
どんな魔物より、私達が一番、質が悪い。
私を責める冷たい風に、雨で濡れた体は凍えてしまいそうだった。