「……お前さ、何を怖がってんの?」

カタカタ、と舞白は震えた。
いや、初めから震えていたのかもしれない。

寒さからか。
それとも恐れからか。

「怖がってなんか、いませんよ、何も」

本人はそう言うが、揺れる瞳は珍しく正直だった。



刹那

少女の体は男の腕の中にすっぽり収まっていた。

抱き締められているのだと気付くまで、そう時間は掛からない。



「何するんですか、止めて下さい……生徒に手を出すなんてどうかしてるわ」

冷やかに言うのを

「馬鹿、折角俺が勇気付けてやろうとしてるんだから、ちょっとは空気読め」

男の声が遮る。

「ハグで私に勇気が付くと?あさはかな方ですね、本当に」

「うっせぇよ。てめぇみたいなクール系は“愛に飢えてる”って相場が決まってんだよ」

どこの漫画だ。
呆れて溜息さえ出ない。



雨に濡れた少女の体は温度のない人形のようで。

言葉より、彼女が背が余りにも冷たくて、虎次郎は一瞬だけ、その腕に力を込めた。



それは恋でもなければ家族愛などでもなく、勿論友情でもない。