蝋で固めた鳥の羽根を手に大空へと舞い上がった愚か者は、父親からの忠告を忘れ高く飛び過ぎたために、燃え盛る太陽に翼を奪われ

その命を失ったという。



ならばこの男もいずれ――。






ふと、そんな事を考えながらも、目を開けた少女は手にした懐中時計を一瞥して

かなしみに怒りに驚愕に、そして悦びに、その顔を美しく、魅力的に歪ませた。






――せめて今だけは、この仮初めの謀略の中で踊ってみようか。








【愚者の翼・終】