「それにしては随分と、権力者を支えるのが好きそうだけれど」
「……例えるならば……ひび割れたガラス玉を壊すより、傷一つない鋼鉄を砕く方がずっと――面白い」
死神の目が、声の主を睨む。
「残念だけど、そんなものはすぐに、貴方の敬愛する生徒会長や風紀委員長に気付かれるわよ。特に彼女は、“読める”もの」
再びアイスグリーンが細まる。
いつもなら一文字に結んでいるコーラルレッドの唇を、意地悪く撓ませて。
「確かにあの方は厄介な力をお持ちだが、けれど“こちらが読ませなければ”意味はない」
一瞬、舞白は迷った。
三日月の大鎌を今すぐ彼の喉元に突き付けて、その傲りを諫めてやろうか。
しかしそれは軋む空気に溶けて消えた。
「一体貴方は何を望んでいるの、“アルフレド”君」
彼女の言葉に違和を感じる事なく、少年は艶やかに微笑んで瞼を下ろした。
「“学園の平和と生徒達の笑顔”に決まっているでしょう」
漸く少年から視線を外して仰ぎ見た窓の向こう側は、どこまでも澄み切った青。
虚しさに、瞳を閉じて
「――嘘が下手だこと」
自嘲気味に薄く笑った。
嗚呼、これだから人間なんてものは信用ならないのだ、と。

