しかし一つ、忘れてはならない事実がある。
この女は仮にも
神、だ。
舞白の髪が雪の色に染まり、蒼白い肌はさらに生気を失う。
突然、淡い闇が少女の身を包んだかと思うと、次の瞬間“何か”ごと弾けて、そして煌めきながら静かに消えていった。
それはまるで花火のようで。
はかなげで、実に神秘的であった。
「私の心を、乗っ取れるとでも思った?」
少年は一瞬驚いた表情をしたものの、すぐにまた、あの笑顔を見せる。
「まさか」
互いを見ている筈なのに、二人の視線が交わる事はない。
「ボクだって本気で貴女の事を操れるなんて思っちゃいない。人間ならともかく、相手は、死神だ」
“知っていたの”と言おうとして、舞白は口を僅かに開けたが、どうしてか言葉が出なかった。
先程よりずっと長い沈黙。
途中、どこからか爆発音が轟いた。
“歩く火薬庫”と呼ばれる一年生か不幸体質な二年生、或いは吐血する三年生あたりが、また何かやらかしたのだろう。
けれどそれでも、保健室の空気が揺らぐ事はなかった。
緊張感は飽和して、最早決壊寸前。

