「小岩井さん」
鋭く、
「それから内山田さんとジョーンズさんと早乙女さんと佐々木さん」
舞白は低い声で言葉を放つ。
「申し訳ありませんが、十分程出て行って下さいませんか」
窓は閉まっているのに、彼女の髪の毛はゆらりと波打っている。
その時のオーラは、どこか生徒会長のそれと似ていた。
「彼と大事な話がありますので」
言うと同時に保健室の空気が微かに揺れて、そしてまた落ち着いた。
“彼ら”は確かに、保健室を出てくれたのだ。
カチン。
懐中時計の蓋が閉まる無機質な音が空間に谺する。
刹那、
彼女の背を悪寒が走った。
黒く渦巻いた、実体のない“何か”が
舞白の目から、髪から、肌から、入り込んで来ようとする。
じわり、じわり。
それは蛇の如く、蜘蛛の如く、蜂の如く、飢えた獣の如く
締め付け、絡まり、這い回り、唸り、牙を剥き。
意識が持って行かれそうになる。

