「……少し、意外だわ」
銀と見紛う薄灰色の髪を片手で撫で付けてから、舞白がぽつりと呟いた。
「貴方の事だからすぐに飛び起きて、這ってでも会議に参加しに行くと思ったのに」
言葉とは裏腹に、舞白はアルフレドが反論するのを期待していた。
“いくらなんでもそこまではしない”
と。
だがアルフレドは何も言わない。
ただギチリ、ギチリと、乾いた時が流れる。
まるで歪んだ歯車みたいに。
滑りの悪いそれに耐え切れず
「一生懸命なのも結構だけど、過労で倒れる程頑張る必要があるのかしら」
先に沈黙を破ったのは、舞白の方だった。
「貴方の事が心配だわ」
それでもやはり、アルフレドは何も言わない。
代わりに彼は、退屈そうに面倒そうに、体を起こした。
こちらを向いた彼に、彼女は思う。
――何か、変だ。