少年が目を覚ますと、一番最初に見えたのは見覚えのある天井。

それが保健室の物である事を思い出したのは、自分を抱いている純白の布団に気が付いたからだった。



アルフレド・バルツァーは目を閉じ一度深く息を吐くと、状況を理解しようと徐に周りを見渡す。

左側を向いた時、椅子に腰掛けこちらを眺めている少女と目が合った。



「ボクは、倒れでもしたんですか」

「そのようね。疲労と聞いたわ」

少女にそれを聞かせた相手――この部屋の主は、ちょっと用事を思い出したとかなんとか宣って、ついさっき保健室を出て行ってしまった。



そうですか、と呟いてアルフレドはもう一度深く息を吐く。

「貴方もつくづくタイミングが悪いわね。もう少し早く目覚めていれば、お見舞いに来た生徒会長と会えたものを」

時折手にした懐中時計に視線を落としながら、少女――因幡舞白は淡々と言った。

「見舞い?」

「ええ。なんでも大事な会議があるとかで、早々に出ていってしまったらしいけれど」



「……嗚呼、もうそんな時間ですか」

言いながら、少年はモソモソと寝返りを打つ。

少女の方からは彼の背中と、黄土色掛かった金髪だけしか見えなくなった。

決して派手な印象を与えないくすんだその色は、彼の質実さと謙虚さの反映のように彼女には思えた。