一緒に音楽室を目指して出発した二人だったが、

お互いの体質が負の相乗作用をもたらし、いつまで経っても音楽室どころか人のいる教室にすら辿り着けない。

最初は相手の方向音痴っぷりを嘗めていた不幸少女千歳も、歩けど歩けど見付からない音楽室にだんだん不安になってくる。



一方の方向音痴美葉は携帯を取り出し、慣れた様子で電話を掛けるのだが…。

「ゲッ!龍太郎のくせに電源切ってる!?生意気ぃ!」

流石のスペシャルバカでも少しは学習したのか、はたまた誰かが勝手にやったのか、それとも担任の毒舌倫理による強制か、いずれにせよ繋がらない電話。



「仕方ないなぁ、他に迎えに来てくれそうな知り合いは……」

スペシャルバカには早々に見切りを付けて、美葉は、思い付く限りの友人達に電話を掛けようとする。

しかしながら。

「嘘でしょ、誰とも繋がらない」

固まる美葉。

それもその筈。

仮にも現在授業中、大概の生徒は携帯の電源をオフにしている。

その時間の担当教諭にもよるが、授業中に携帯が鳴ろうものなら撲殺斬殺呪殺はほぼ間違いないからだ。

げに恐ろしき天神学園教師陣。