「ばん――」
「あっ！万里ちゃーん！」
突然投げ込まれた陽気な声に、思わず口を閉じた。
「チカ君達が大富豪やろうって捜してたよ？」
「嗚呼、教えてくれてありがと、すぐ行く」
「うんわかった、それじゃあね」
「バイバイ」
微かに、それでも確かに笑った万里。
嘘だ、私が知っている姉は、こんなに簡単に笑う人じゃなかったのに。
途端、頭の隅にあった劣等感が膨れ上がって、ケタケタ私を嘲笑する。
「アンタもやる？大富豪」
贋作の笑顔が、消えてくれない。
「あ……私は、いいや。コレやらなきゃ」
「そっか。じゃ、頑張って」
「……うん、ありがと」
最後の希望を掛けた姉さえも、結局答えを教えてはくれないだろう。
どうせ離れて行ってしまうんだったら、最初から突き放してよ。
安っぽい希望なんて持てないくらいに。
嗚呼ほらやっぱり
私は、あの女が嫌いだ。
【笑う門にはナントヤラ・終】
