覚悟を決めて、おそるおそる手を出して彼の手を握った。


お互いに手袋をしているので体温はわからないはずなのに、その手はすごく心地の良い温かさで…



「おくるよ。」



家が近いから平気と答えようとしたがその前に先程まで握っていた右手を今度は彼の左手に取られた。



「行こっ!」



明るく言って、私の手をひく志木君。


手を繋いでいる訳ではない。


ただ手首を持たれているだけ。


その手をふり払うことが私にはできないから。


恥ずかしいけど嬉しいという本音を隠して私は志木君と帰路を歩いた。



彼の笑顔を間近で見れてすごくドキドキした。


静かに目をつむるとこのうるさい音が響いてしまいそうで。


心の中では沢山の気持ちが混ざり合って大変だったけれど…


それでも、私の表情はいつもと変わることがなかったと思う。