俺は君を忘れない。



たとえもう二度と、会えなくても。



たとえ君が、他の誰かを愛しても。



――――君が俺を忘れても。





「なぁ、雨竜。」



明日、俺は出撃する。



今夜が最後の夜となる。



「なんだ。」



寝転んだ状態のまま、松田が俺に話し掛けた。



松田も、明日一緒に征く隊の一員である。



「遺書、書いたか?」

「あぁ。」

「俺さぁ…書けねぇんだよ。」

「書けない?」



松田は天井をじっと見つめたままだった。



「なにを書いたらいいのか、分からなくなった。最期に言いたいことなど、ありすぎるようで、実は何もない。」

「恋人か?」

「あぁ」



やはり、みんなそうなのだ。



死ぬ前に恋人に言うことなど、すんなり浮かんで来るはずがない。