「雨竜一平は、私の兄になります。」
「一平さんが、お兄さん…?」
出会って間もない頃、私は一平さんに聞いたことがある。
弟と妹がいると。
似てるはずだ。
私は尋ねた。
一平さんではなく、貴方がここに来た理由を。
目を逸らさずに、聞かなければいけない気がした。
「兄は…特攻で戦死しました。」
『トッコウでセンシ』
返ってくる答えなんて、最初から分かっていた気がした。
それでも確かめずには、いられなかった。
だけど覚悟なんて、とっくに出来てるはずだ。
「…そうでしたか。」
私は小さく息を吐いた。
今まで頭の中で、何度も何度も行き着いた結末が、今現実となったのだ。
大丈夫、私はもう現実から目をそらしたりなんてしない。