「コト、何してんの?」 「木と話してる」 秘技、メルヘントリップの術。 けれどシュウはバカにしたりしない。 何となくそれも、私の中では想定内だった――と思う、多分。 「木は何て?」 興味津々で尋ねられ、胸の奥がくすぐったくなった。 「『幸せかい?』って聞かれた」 「何て答えたの?」 その声は、 透き通るほどに澄んだ音色で。 鼓膜をスルリと抜けそして―― 私の心を優しく揺さぶった。 ゆっくりと瞼を上げて、顔ごと声のした方へ向ける。