「うん、ずっと笑ってて」
シュウはそう言って、私の頭の天辺に右手で触れた。
髪の毛がクシャリと揉まれて、そのくすぐったい感触にホッとする。
ふふっ――
笑い声までもが自然に漏れ出た。
シュウはそんな私に目を細めると、
「ラブ・アンド・ピースだね。
穏やかで、優しくて、深い」
訳のわからない事を、何故だか満足げに微笑んで口にする。
単語一つ一つは至極簡単な日本語なのに。
どうしてシュウが並べると、こんな風に意味を成さない言葉になってしまうのだろう。
「さてと。
僕も風呂入ってこよ」
上機嫌でそう言って、軽い足取りでリビングから出て行った。
パタンと小気味良い音を鳴らして部屋のドアが閉まると、その向こう側で、
「コトの笑顔は地球を救う」
シュウがまたしても意味不明な言葉を、テレビ番組か何かの謳い文句のように口にする。
思わずブッと吹き出してしまった。



